夢についてのお話 1/5

眠りについてのお話

数日なら眠らずに過ごす事はできるかもしれませんが、やがて神経は衰弱し、正常心は保てなくなります。
睡眠は、食事と同様に私たちの生命の維持にとって必要不可欠な生理現象です。

「睡眠」は一般に身体の疲労を回復するためのものと思われがちですが、「眠ること」の働きはそれだけではありません。
神経や精神の疲労を取り除き、生体としてのリズムを維持する、そして何よりも「記憶の整理」を行うという重要な役割を果たしているのが睡眠なのです。

「人間は人生の3分の1をベッドのなかで過ごす」という言葉がありますが、この言葉も私たちにとっての「眠り」の大切さを物語るものと言えるでしょう。

そして私たちが、その「人生の3分の1」のなかで悩んだり考えたりしたことが表れるのが、夢の世界ということになります。

ときに「夢」は、私たちに有意義なアドバイスを与えるものとして、またあるときは私たちを惑わせるものとして、はるか昔から世界中のさまざまな芸術作品や歴史のエピソードのなかに登場しています。

とくに有名なのが、「新約聖書」のなかの聖母マリアへの受胎告知の場面でしょう。
ある夜、眠っているマリア様の夢のなかに天使が現れて「あなたは体内に神の子を宿している」と告げるのです。
その夢のお告げの通りに、聖母マリアは処女懐胎をし、やがてキリストを出産することになるのです。

また、日本では「古事記」のなかに「夢」に関する記述が出てきます。それによれば崇神天皇の時代に疫病が大流行しました。
崇神天皇は疫病を防ぐために神を祀ってある寝床に入り、どうしたらいいか夢の中で神に尋ねるというお話です。

有名な法隆寺の夢殿は、聖徳太子が夢の中からインスピレーションを得るための瞑想空間だったと言われておりますし、さらに古代ギリシアでは病人が見た夢の内容を元にして治療を行うという医療行為が行われていたと伝わっています。

これらのエピソードからも、夢が太古から世界中で神聖視されていた事がわかります。
夢は人間にとって「神声」として様々なメッセージを与えてくる現象だったのです。


夢は抑圧された願望の表れなのか?


それまで神聖で人間の理解を越えたものとされていた「夢」を初めて科学的に見つめたのが、オーストリアの精神分学者「フロイト」です。

彼は、夢は人間のさまざまな願望が反映したものと考えました。私たちは誰もみな、性欲や権力欲などの「5欲」を持っています。
とくに性欲に関して「完全にノーマルな人」は殆どいないといっても過言ではありません。

たとえばスポーツマンでないと好きになれないという人は、かたよった傾向があるわけで、年上の男性ばかりを好きになるという人はファザーコンプレックスかもしれません。
SEXが苦手という人も、逆にSEXを強く意識しすぎており、無意識にそれを遠ざけているという傾向があるとも言われております。

しかしそれらの欲求は、理性の中では「してはいけない事」「はずかしい事」と考えられています。
そのため、ふだんは抑圧され本人にも意識されることはありません。
ただし夢のなかではそうした理性の働きが薄れるために、欲望が表面化しやすいのです。

とはいえ夢のなかでも、わずかながら理性の抑圧作用は残っています。
ですから性欲などがストレートに夢のなかに表れることは滅多にないのです。
性欲や権力欲が夢の中に表れる場合、夢特有の象徴的な表現となって表現されるわけです。

私たちが自分の心の奥底に潜むこうした欲望を、そのままにしておくことは決して良い事ではありません。
フロイトはこうした欲求を押さえつけることによる不満が、さまざまな精神的な変調の原因と考えました。

大切なのは、そうした自分のなかに潜む欲望を知り、それを認めることなのです。
フロイトは実際に患者の心理を分析し、その内容を相手に告げるだけで、多くの患者の症状が消えることを確認しました。

私たちも自分の中にあるさまざまな欲望を自覚することで、ストレスやプレッシャーから解放されることになります。
その意味でも、自分が見た夢を冷静に分析してみることは、とても大切で有意義な事なのです。


夢は深層心理からのメッセージなのか?

フロイトの弟子であるユングは、フロイト的な考え方だけでは解読できない夢が数多くあることに気付きました。

例えば「正夢」などは「単なる偶然」では片づけられないほど数多く存在しています。
これらはフロイト的に「深層心理の願望=夢、それが現実化した」と考えるだけでは無理があると考えたのです。

そこから生まれたのが「夢による予知やアドバイス」という考え方です。 私たちは普段の生活のなかで、さまざまな物を見ています。
しかし実際に、その中で意識が捕えることができるのは、ごく一部の情報にすぎません。
どんなに注意力や観察力に優れている人でも、認識できる情報の量には限界あります。

しかし私たちの無意識は、現実の生活の中で膨大な情報・事柄について観察し、そこから生じる結果を推理しています。

例えば、あなたがある異性と知り合ったとします。
彼はルックスもよく、高収入、しかもあなたに対して優しく、まさに理想的な存在だとします。
表面的な意識の世界では、あなたは彼に恋心を抱いてしまいそうです。
しかしそんな相手に対しても、あなたの無意識はしっかりと観察力を発揮しているのです。
彼のちょっとしたしぐさの中から相手の下心を見抜いたり、彼の持ち物から他の女性の存在を見抜いたりといった具合に。
彼が何気なく開いたアドレス帳のなかに他の女性の電話番号が書かれていて、意識の上では見えないくらいのスピードで彼がアドレス帳を閉じてしまったとしても、あなたの潜在意識は見逃さないのです。(これらを心理学用語で“識域下記憶”と言います。)
その識域下記憶は、あなたの意識に対して警告を発しようとするでしょう。
そうした「無意識の世界から意識の世界へのメッセージ」こそ「夢」なのです。

私たちの心の奥底には、もう一人の自分がいます。私たちがさまざまな物事に対して、つい自分の都合のいい考え方をしてしまったり、逆に自信がないときには意味のない不安に襲われてしまったりしやすいのに対して、この「もう一人の自分」は、はるかに冷静で客観的に物事を判断することができます。

夢の中で「もう一人の自分」が私たちに何を言おうとしているのかを読み取ることができれば、さまざまな失敗なども予防できる。それが夢占いの出発点なのです。





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